様子はあ

万全の状態でも組み敷くことはできる」
 その残酷な反論に、澪はベッドに腰掛けたままゾクリと背筋を震わせる。指先も徐々に冷たくなっていくのを感じた。クリアファイルを抱えた手をぎゅっと握りしめ、合わせた膝に力を込め、唇を真一文字に引きむすんでうつむていく。
「あいつは行動も思考も予測不能だ。反省しているまりなかったし、澪を一人で行かせて何か起こったら、いくら後悔してもしきれない。君を二度とあんな目に遭わせるわけにはいかないし、僕も二度とあんな無力感を味わいたくないんだよ。南野さんにも今度こそ顔向けできなくなる」
 悠人は淡々とした口調で言い連ねると、一呼吸おいて続ける。
「もし僕を頼ることに抵抗があるのなら、せめて南野さんと協力してくれないか。彼もそれを望むはずだ。そもそも彼の将来にも関わることなんだから、彼に内緒で事を進めるべきではないだろう」
「そう、ですね……」
 澪はぎこちなく相槌を打った。彼の提案はとても理性的であり、論理的であり、正論だといえる。誠一に話したら面倒なことになりそうだと思ったが、協力してもらうのなら上手くいくかもしれない。それでもやはり意志を曲げる気にはなれなかった。
「師匠の言うことはもっともだと思います。でも、これだけはどうしても一人でやり遂げたいの。師匠にも誠一にも申し訳ないとは思いますが、正しいかどうかじゃなくて私の我が儘なんです。いつまでも守られるだけの自分でいたくない。結果がどうであれ、師匠や誠一に手助けされたら一生後悔すると思います」
 結局、自分の本心はこれだったのだ。
 言葉にすることでようやくはっきりと自覚した澪が、迷いのない視線を送ると、悠人は苦渋に満ちた面持ちでゆっくりと腕を組んだ。考えているということは少しは脈があるのだろう。澪はここぞとばかりに前のめりになって畳みかける。
「お父さまには警戒して
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